Project Story
Mission 01
- 顧客ロイヤルティプログラム
構築プロジェクト - お客さま目線のサービスを拡充し顧客ロイヤルティを新たな経営指標に。
Mission 01
会員事業、不動産事業、ホテル運営事業という3つの事業を展開するセラヴィリゾート泉郷。その中のホテル運営事業では全国の宿泊施設で年間60万人泊もの宿泊客が訪れ、リゾートでのひとときを楽しんでいる。ホテル運営については、リゾートホテル、コテージ、わんわんパラダイスといった宿泊施設の特徴を活かすことで、年々お客さまの数を増やすことができている。一方、当社には、会員の方々(会員事業)、別荘オーナーの方々(不動産事業)、一般利用者の方々(運営事業)といった、色々な背景の方々がいらっしゃる中で、「全てのお客さまを大切にする」という名目のもと、事業毎、会社全体のサービスに対する考え方が整理しきれていなかった。とりわけ会員の方々へのサービスについては、長年の課題を抱えていた。再三討議の題材として上がり、ホテルによっては会員さま向けのサービスを設けるところもあったが、それでも会社全体としては中途半端。というのも、お越しいただくお客さまの数は年々増え続け、それゆえ目の前のお客さまにいかに楽しんでいただくかに意識が集中し、当社にとって重要なお客さまに望まれ必要とされるサービスとは何か、明確な答えが出せないままでいたのだった。
だが、2016年に就任した代表取締役の「顧客第一の原点回帰」の考えが社内の空気を変える。サービス業を営む当社において、顧客ロイヤルティの向上は欠かせない。会員事業においては会員であるからこそ、長く何度も利用してくれるロイヤルカスタマーになり得、事業の継続性が高まる。新代表の考え方をもとに、「顧客に対する取り組み方を確立し、当社にとって重要なお客さまに望まれ必要とされるサービスの提供によって満足度、顧客ロイヤルティを上げることこそ経営指標にすべき」、という社内の方向性は自然と定まっていった。そしてマーケティング推進部の大野をリーダーにメンバーが選ばれ、「顧客ロイヤルティ構築プロジェクト」はスタートをきった。
全社にかかわるこのプロジェクトは、3つの事業本部は当然のことながら、計数管理、システムや法務など幅広い人材がメンバーとして集められた。最初のミーテングでは「本当にできるのか」「現場に負担がかかりそうだ」という、どこか斜に構えるメンバーもいた。しかし、大野は「求めるのは世代を越えて愛されるリゾートになることであり、事業としての継続的な発展だ。顧客に喜ばれることこそモチベーションとすべき」と他社の成功事例を示して説いた。目の前の業務ではなく、先を見据えて全社で意識の転換をはかっていく必要があった。
具体的にはプロジェクトの第一段階では、顧客の声をしっかりと把握するため、アンケートを実施することになった。問う項目は30問、合計20ページにものぼるボリュームだ。顧客が何を考え、どんなサービスを欲しているのか、少しでも多く知りたい気持ちが分厚いアンケートに込められていた。しかし、アンケートの専門会社からはこのボリュームではせいぜい10%程度の返信があれば良いと言われ、「たいした反応はないのかもしれない」大野はそんな風にも思った。だが、その考えは大きく裏切られることになる。届く回答は日々増えていき、最終的な返信率はなんと28%にものぼったのだ。驚きとともに、感じたのは顧客の皆さま方の「期待」だ。1,000通を超えるアンケートの山から感じるその大きさに、なんとしても応えなければならなかった。
さらに、社内の意識向上の一貫で、企業のブランド動画を作成した。顧客にどう向き合っていくのか、会社の姿勢を視覚化し、従業員にも改革に対するモチベーションを上げてもらうためだ。完成した動画には会社の思い、目指すべきものが詰め込まれていた。全社会議にて完成品を見終わって涙するものがいるのを見て、「この動画が皆の意識を一つにしてくれる」そんな確信が大野をはじめプロジェクトメンバーたちの中に広がっていった。
寄せられたアンケートの中に、目につく意見があった。大型ホテルではチェックイン時に行列ができるため、改善して欲しいというものだ。アンケート全体の分析には時間がかかるが、すぐにも実現可能で意味のある改革は行うべき。その考えで一致し、客室数197とグループの中でも最大規模を誇るAMBIENT 安曇野で、ロイヤルティの高いお客さま向けの優先ラウンジを設置し、先ずは会員の方々と別荘オーナーの方々にご利用いただく計画が持ち上がった。ちょうどフロント横に物置同然になっていたスペースがあり、ここを改装することにしたのだ。
すぐに実行に移すことは決まったが、運営を担うホテルのスタッフのモチベーションは必ずしも高くなかった。フロントを中心に仕事が増えることになるからだ。確かにスタッフの負担は少なからず増加する。しかしプロジェクトが目指すのはお客さまにリゾートを楽しんでもらい、それを顧客ロイヤルティの向上につなげることだ。このプロジェクトメンバーの一人であり、ホテルの支配人でもあった菅野は、「従業員が納得しなければ成功はない」と考え、説明会を開催する。「お客さまが喜ばれてこそホテルは繁栄し、それが顧客のみならず従業員の満足にもつながる」、プロジェクトの意義と熱い思いを150名にも及ぶ従業員に直接語りかけた。その考えや思いはブランド動画で描かれたものでもあった。支配人自らによる説明を聞き、スタッフの意識が変わりはじめる。前向きに計画を捉え、意見を寄せるようになったのだ。こうした変化こそ、プロジェクトメンバーにとっても嬉しいものだった。
ラウンジの完成までには、照明の色、壁の高さ、インテリア、ドリンクの種類といったことについて、細部までスタッフも意見を出し合って決定していった。皆の活発で前向きな姿勢こそ、菅野が求めていたことでもあった。プロジェクトの意義をホテルの皆が共有し、より良い内容について知恵を出し合った上で出来あがったラウンジは、カジュアルで気軽な雰囲気を持ちつつ、明らかに特別な場所だと感じられる雰囲気に仕上がった。こだわりのコーヒーなど、ゆっくりドリンクが飲めるソファスペースもある。会員の方からは「こんな場所が欲しかった」と好評を得られ、ご利用の方への声がけ、ドリンク補充などもフロントスタッフが率先して動くようになり、菅野をさらに喜ばせた。大きなホテルのほんの小さなスペースが、顧客にも、スタッフにも良い影響を与える存在として稼働し始めた。
このラウンジは顧客ロイヤルティを高めるための、一つの意見を形にしたもの。回収されたアンケートに込められた期待に応えるには、継続性のあるプログラムを策定し、顧客ロイヤルティを構築し、生産性の向上に結びつけるといった各フェーズをこなしていかなければならない。ただ、一つの成功事例を作れたことで、大野は「今後グループ全体に波及させ、サービスレベルを向上させていく上で指針にしたい」と意気込む。ほかにも考えられるサービスは数多くある。顧客の声を聞きながら、それを一つひとつ実現して経営指標としていく作業が始まる。当社にとって重要なお客さまに望まれ、必要とされるサービスを拡充し、セラヴィリゾート泉郷のファンがたくさん生まれ、多くのお客さまに愛される、そのゴールに向けて一歩が踏み出された。
マーケティング推進部
部長
AMBIENT 安曇野
支配人