Project Story
Mission 02
- 八ヶ岳再生プロジェクト
- 貸別荘をリニューアルや新築で増やし、
宿泊事業としての活性化を目指す。
Mission 02
八ヶ岳の南麓に広がる「AMBIENT 八ヶ岳コテージ(旧:ネオオリエンタルリゾート八ヶ岳高原)」。昭和45年から開発が始まった、1300棟ものコテージが立ち並ぶ別荘地であり、セラヴィリゾート泉郷が不動産の売買から別荘の建築、運営・管理まで一括して手がける土地だ。このリゾート内には宿泊施設として利用されている200以上ものコテージがある。種類は二つあり、自社で所有するものと、オーナー所有のコテージのうち、良質なものを貸別荘として契約し、オーナーに賃借料を支払うことで宿泊施設として使うというスタイルのものだ。貸別荘とはセラヴィリゾート泉郷が昭和50年から取り組んできたビジネスモデルで、オーナーには利用制限があるが、賃借料を得ながら別荘を所有できるメリットや、定期利用されることで建物の老朽化を遅らせることができるメリットもある。一方で、宿泊施設として運営する側にも宿泊料金による収益を得られるメリットがある。つまり、顧客と企業の双方にメリットを生むものであり、さらに、宿泊を求め観光客がこのエリアを訪れることで八ヶ岳自体も活性化するという、いいところずくめのビジネスモデルだった。
しかし課題もあった。宿泊商品としてのコテージは約30年が寿命と言われ、使用頻度が低いと傷みも進む。老朽化によって別荘地全体が衰退するのを防ぐには、適正な時期にコテージを修繕したり建て替えたりしていくサイクルを作る必要がある。近年では貸別荘が年々減少し、ここ5年以内でも老朽化やオーナーの個人別荘への契約変更を主な理由に、50棟近くが廃止となっていた。「このまま戦略を立てずに放置すれば数は減る一方で、近い将来宿泊事業はできなくなる―—」総支配人として長く八ヶ岳を見てきた田中はそんな危機感を募らせていた。そこで、リニューアルや新築によって貸別荘を増やしながら、一方では老朽化した別荘は意図を持って減らしていくことが必要だと考えた。良質な貸別荘という質の高い宿泊商品を消費者に提供し続けることができる事業モデル、「貸別荘リサイクルモデル」を構築する「八ヶ岳リノベーションプロジェクト」は、こうした背景のもとに立ち上がった。「宿泊事業でも、ホテルや大型旅館などはであれば、施設が老朽化すれば、いずれ立て替えや売却などの大きな経営ジャッジが必要になる。貸別荘なら1棟ずつでも対応は可能だ。しかも投資した費用はオーナーに販売することによってコストではなく利益となって帰ってくる。それが貸別荘システムの最も優れたポイントであり、リサイクルモデルが回転していけば、この地で半永久的に貸別荘事業を続けることができる」。その熱い思いの元、リーダーの田中をはじめ、不動産営業部の面々も協力し合う、横断的な取り組みがスタートした。
現在貸別荘として使用されているコテージの改修から、宿泊に関する効率的なオペレーションの追求まで、プロジェクトでやるべきことは数多く挙げられた。その中でまずは「花ホテル」と呼ばれる、オーナー保有の貸別荘58棟のリノベーションと、自社保有2棟の大規模リフォーム、さらに自社による5棟の新築計画が決まった。「花ホテル」は2004年にデッキに露天風呂を設置するなど一度改修していたが、そこから既に10年以上が経過し、建物全体に手を入れる時期にきていた。自社保有であれば話は早いが、「花ホテル」はオーナーの了承や新たに契約を結ぶ必要もある。ここには不動産営業部の担当者が当たることになった。また、新築の計画は作ることを優先した。買い手がいて建てるというのが通常の考え方だが、「建てて貸別荘として使用しつつ、欲しいというオーナーが現れれば中古として値段を少し下げて販売すればいい」、田中はそう考えた。まずは新築の流れを加速していくことこそを優先した。
プロジェクトでは、通常は事業部ごとに動いているメンバーが協力し合うことが重要だった。物件売買や契約についてオーナーと接点を持つ不動産営業部と、宿泊施設としてのサービスを重視する運営統括部では、軸がやや異なる。改装やオーナーとの契約内容を含めたルール作りにおいて、「オーナーのために」、「宿泊事業として」等、時には意見を戦わせることもあった。ただ、共通していたのは「リゾートで楽しんでもらう」という意識だ。コテージのリノベーションも、宿泊事業の活性化も、すべてはここを利用する人のためのもの。その共通認識の元に結束し、メンバーはそれぞれの作業に当たっていった。
「花ホテル」のリノベーションについては、セラヴィリゾート泉郷の負担で床のフローリング化、壁紙張替え、カーテン、インテリアやボイラーの交換等を行うことになった。オーナー負担となると交渉に時間がかかり、プロジェクトが停滞してしまうというのも理由の一つ。一方でオーナーに費用を出してもらいたい部分もあった。最近のホテルでは一般的である温水洗浄便座をつけるための浄化槽工事や別荘外壁、屋根の葺き替えなどは、会社負担の対象外。だが宿泊商品の魅力を増すためには対応して欲しいのが本音だ。これについては所有別荘の物件価値と宿泊商品としての価値向上を会社とオーナーとで協力して実現できるよう、不動産営業部のスタッフが、地道な交渉を続けていくことになった。
リノベーションは2期に分けて工事が進んでいるが、既に完成したコテージを見ると壁紙が貼り替えられ、傷みが進んでいたカーペットはフローリングに変わり、明るく、清潔感の感じられる空間へと生まれ変わっている。「これならお客さまにも十分満足していただける」、メンバーたちもそう確信する出来だ。「ホテルより広く、自由度の高いコテージは商品性も高く、潜在需要はまだまだある」と田中も強い確信を抱き、プロジェクトをさらに推進していこうとしている。
これらを運営するための新たなルール作りや、宿泊オペレーションの効率化、新しい貸別荘契約交渉など、整備するべき項目はまだある。オーナーとの関係づくりも大事にしていかなければならない。どのような商売も購入していただいた方が「買って良かった」と感じなければ続かない。ここでは別荘オーナーが「この地に別荘を持って良かった」と思ってもらうことではじめて継続的な事業が継続できる。「このプロジェクトに完成形はない」と言う田中。コテージを適正なサイクルで建て替えつつ、いずれは店舗や生活に必要な各種施設など、町としての機能を備えた場所にしたいという思いがあり、プロジェクトは最初の土台作りのようなものだ。この八ヶ岳の地にオーナーをはじめ多くの人が集まっていつまでも活気あるリゾートとして繁栄していくことこそ、田中や会社の願い。オーナーとも同じ思いを共有しながら、これからも八ヶ岳の繁栄のため、前に向かって歩み続けていく。
八ヶ岳清里運営統括部
AMBIENT 八ヶ岳コテージ(旧:ネオオリエンタルリゾート八ヶ岳高原)/清里高原ホテル
総支配人